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好きなラッパーのライブやヒップホップのフェス。チケットを取ったのに急に行けなくなったり、売り切れで手に入らなかったりしたとき、フリマアプリや転売サイトが頭に浮かぶ人もいるかもしれません。でも、チケットの転売には「チケット不正転売禁止法」という法律があります。
この記事では、e-Gov法令検索に掲載された法律の条文、文化庁の資料「チケット不正転売禁止法とは」、文化庁の通知「チケット不正転売禁止法の適正な運用について」、政府広報オンラインの記事をもとに、チケット不正転売禁止法のしくみを5つのポイントにまとめます。後半の、ライブのチケットで困らないための工夫は、この記事の提案です。
※この記事は法律の概要を紹介するもので、個別のケースが違反にあたるかどうかを判断するものではありません。具体的なことは、チケットの利用規約や興行主、文化庁、警察の相談窓口などで確かめてください。
チケット不正転売禁止法とは
正式名称と施行日
正式名称は「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」です。平成30年(2018年)12月14日に公布され、政府広報オンラインによると、令和元年(2019年)6月14日に施行されました。
法律ができた背景
政府広報オンラインでは、これまでチケットの転売は「ダフ屋行為」として各都道府県の迷惑防止条例で取り締まられてきたものの、インターネット上での売買は、迷惑防止条例で取り締まることのできる「公共の場所又は公共の乗り物」での売買に当たらないと説明されています。そこで、インターネット上での不当な高額転売なども禁止するために、この法律ができたとされています。
対象になる「興行」
法律では「興行」を、映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能またはスポーツを、不特定または多数の者に見せ、または聴かせること(日本国内で行われるものに限る)と定義しています。
チケット不正転売禁止法を知る5つのポイント
ここでは、法律の条文と文化庁・政府広報オンラインの説明から、押さえておきたい点を5つにまとめます。
1. 対象は「特定興行入場券」
この法律の対象は、すべてのチケットではなく、「特定興行入場券」と呼ばれる、一定の要件を満たすチケットです。不特定または多数の者に販売され、次の3つの要件をすべて満たすものとされています。
2. 3つの要件
政府広報オンラインでは、要件を次のように説明しています。
- 販売に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、その旨が券面(電子チケットは映像面)に記載されていること
- 興行の日時・場所、座席(または入場資格者)が指定されたものであること
- 座席が指定されている場合は購入者の、指定されていない場合は入場資格者の、氏名と連絡先(電話番号やメールアドレスなど)を確認する措置が講じられており、その旨が券面に記載されていること
3. 「不正転売」とは
法律では、「特定興行入場券の不正転売」を、興行主の事前の同意を得ない、業として行う有償譲渡で、興行主などの販売価格を超える価格で売るものと定義しています。文化庁の資料では、「業として」を、反復継続の意思をもって行うことと説明しています。
4. 禁止される2つの行為
法律では、特定興行入場券の不正転売(第3条)と、不正転売を目的として特定興行入場券を譲り受けること(第4条)が禁止されています。
5. 罰則
第3条や第4条に違反した者は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処され、またはこれらが併科されると定められています(第9条)。
5つのポイントの早見表
| ポイント | 法律・資料の内容 |
|---|---|
| 対象 | 特定興行入場券(一定の要件を満たすチケット) |
| 要件 | 有償譲渡禁止の明示と表示、日時・場所・座席等の指定、氏名・連絡先の確認と表示 |
| 不正転売 | 興行主の事前の同意なく、業として、販売価格を超える価格で有償譲渡 |
| 禁止行為 | 不正転売と、不正転売目的の譲り受け |
| 罰則 | 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方 |
表の内容は、法律の条文と文化庁・政府広報オンラインの説明をこの記事でまとめたものです。
対象外になるチケット
特定興行入場券に当たらない例
政府広報オンラインでは、次のようなチケットは「特定興行入場券」には当たらず、この法律の対象外になると説明されています。
| 対象外になる例(政府広報オンラインより) |
|---|
| 招待券など、無料で配布されたチケット |
| 転売を禁止する旨の記載がないチケット |
| 販売時に購入者または入場資格者の確認が行われていないチケット |
| 日時の指定のないチケット |
対象外でも入れないことがある
一方で、政府広報オンラインでは、コンサートやイベントによってはチケットの転売を規約で禁止しており、転売されたチケットでは会場に入れないことがあると注意をうながしています。法律の対象かどうかとは別に、興行主の利用条件を確かめることが大切です。
個人でも対象になる?
業者だけではない
政府広報オンラインでは、チケットの転売は、業者だけでなく個人であっても、反復継続の意思をもって、販売価格を超える価格で転売が行われていれば、「不正転売」に当たり、罰則の対象になると説明されています。
仲介サービスでの出品
文化庁の通知では、インターネット上の仲介サービスを利用した不正転売が多発しているとして、たとえば同一の出品者が元の販売価格を超える金額で2回以上チケットを出品しているケースなどは、法律に規定する禁止行為となることがあると説明されています。
買った人は罰せられる?
文化庁の資料では、この法律は「不正転売チケット購入者を罰する法律ではない」と書かれています。ただし、不正転売を目的として譲り受けることは禁止されています(第4条)。また、転売チケットでは会場に入れないことがある点にも注意が必要です。
興行主や国の取り組み
興行主の努力義務
法律の第5条では、興行主などは、不正転売を防ぐため、会場に入ろうとする人が入場資格者と同一の者であることを確かめる措置などを講じるよう努めるものとされています。あわせて、興行主の同意を得てチケットを譲渡できる機会の提供など、適正な流通のための措置を講じるよう努めるものとされています。
情報提供と相談
第6条では、興行主などは、販売するチケットについて正確かつ適切な情報を提供し、購入者などからの相談に適切に応じるよう努めなければならないとされています。国と地方公共団体も、不正転売に関する相談に応じる体制の充実を図るよう努めるとされています。
| 条文 | 内容(この記事での要約) |
|---|---|
| 第3条 | 不正転売の禁止 |
| 第4条 | 不正転売を目的とした譲り受けの禁止 |
| 第5条 | 興行主などによる本人確認などの措置、譲渡の機会の提供などの努力義務 |
| 第6条 | 相談体制の充実、情報提供と相談対応 |
| 第9条 | 罰則 |
購入代行や整理券の転売
文化庁の通知では、購入代行事業者がチケットを代理購入して顧客に渡す形をとる場合でも、実質的には売買契約であるのを委託に見せかけたものであれば、有償譲渡を行っていると判断されることも考えられると説明されています。また、事前に発行される整理券や予約番号などを転売するケースについても、その性質などによっては問題となることがあるとされています。
ライブのチケットで困らないための工夫
ここからは、政府広報オンラインと文化庁の資料をもとにした、この記事の提案です。
行けなくなったら公式リセールを探す
政府広報オンラインでは、急に行けなくなった場合は、興行主の同意を事前に得ている正規(公式)のリセールサイトを利用するよう案内されています。まずは、そのライブに公式リセールがあるかを確かめてみましょう。政府広報オンラインでは、公式リセールを使えば定価で売り買いできるだけでなく、公演の延期や中止のときに払い戻しなどの補償も受けられると説明されています。
公式らしい表示に注意する
政府広報オンラインでは、公式サイトであるかのような表示をしている転売サイトもあるとして、運営事業者の所在地や連絡先が明示されているかを確かめるよう呼びかけています。
手数料やキャンセルのルールも見る
チケットの価格だけでなく、手数料や送料、配送予定日、キャンセルに関するルールなども確かめるよう案内されています。
チケットの券面を確かめる
チケットを手に入れたら、券面や電子チケットの画面に、有償譲渡の禁止や氏名・連絡先の確認についての表示があるかを見てみましょう。どんなルールのチケットなのかを知る手がかりになります。
同行者の名前の登録を忘れない
入場資格者を指定するチケットでは、複数人分を買う場合、全ての入場資格者の氏名・連絡先の確認が必要とされています。友だちとライブに行くときは、同行者の情報の登録方法も確かめておきましょう。
チケット不正転売禁止法のよくある質問
定価で友だちに譲るのは?
法律の「不正転売」は、販売価格を超える価格での有償譲渡などの要件を満たすものです。ただし、興行主の規約で譲渡が禁止されている場合もあるので、利用規約を確かめてください。
無料の招待券は対象?
政府広報オンラインでは、招待券など無料で配布されたチケットは特定興行入場券に当たらず、法律の対象外と説明されています。
罰則は?
1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方です。
電子チケットも対象?
法律の要件では、有償譲渡を禁止する旨を券面に表示するか、電子チケットの場合は通信端末機器の映像面にチケットの情報とあわせて表示させることとされています。電子チケットも、要件を満たせば特定興行入場券に当たります。
自由席のチケットは?
文化庁の主催者向けQ&Aでは、自由席のチケットは入場資格者を指定するチケットとして扱い、入場資格者の氏名・連絡先の確認などが必要だと説明されています。
会員番号でも確認になる?
文化庁の資料では、チケット販売サイトやファンクラブなどの会員登録時に氏名・連絡先の確認が済んでいる場合、その会員番号を確認することで、氏名・連絡先を確認する措置が講じられているとみなされると説明されています。
不正転売を見かけたら?
文化庁の通知では、興行主などに向けて、こうした行為を見かけた場合は最寄りの警察署や警察相談専用電話「#9110」に相談(情報提供)するよう案内しています。
チケット不正転売禁止法を知ってライブを楽しもう
チケット不正転売禁止法は、一定の要件を満たす「特定興行入場券」を、興行主の同意なく、業として販売価格を超える価格で転売することや、そのための譲り受けを禁止する法律です。違反すると罰則もあります。行けなくなったときは公式リセールを使い、規約を確かめて、安心してライブを楽しみましょう。